Netflixが直面する「無料で便利な海賊版サイト」との熾烈な競争とは？📉

ストリーミング業界の巨人であるNetflixが、公式文書において「無料で提供される海賊版サイトとの競争はますます難しくなっている」と明かしました。かつては合法かつ利便性の高いプラットフォームを武器に、海賊版の脅威を抑え込んできたNetflix。しかし今、その優位性は大きく揺らいでいます。

📊 世界中で拡大し続ける海賊版サイトのアクセス数

著作権侵害対策を専門にするMUSOの報告によれば、2023年には映画やテレビ番組などを扱う海賊版サイトへのアクセスが前年より約10％増加し、1410億件を突破しました。これらのうち、

という構成になっています。

Netflixは元々、「著作権侵害の競合他社」としての海賊版サイトを意識しながら、サブスクリプションベースの合法サービスを提供することで市場シェアを拡大してきました。その成功により数億人のユーザーを獲得し、一定の抑止力として機能していた時期もありました。

特に、海賊版が「トレント形式」で提供されていた頃は、

といった壁があったため、即視聴可能なNetflixの利便性が大きなアドバンテージでした。

しかし近年、Netflixをはじめとする主要ストリーミングサービスは値上げや広告の導入を次々と実施しています。こうした変化が、「無料で便利」な海賊版サイトにユーザーを流出させる原因になっているとTorrentFreakは指摘します。

Netflixはベーシックプランの新規受付を停止し、プレミアムプランへの誘導を強化。一方で、海賊版サイトは進化を続け、ストリーミング再生にも完全対応するなど、利便性でも合法サービスに肉薄してきています。

Netflixが2024年2月に提出した米国証券取引委員会（SEC）向けの年次報告書「Form 10-K」では、次のように述べられています：

「オンラインビデオ業界は競争が激しく、サブスクリプション、トランザクション、広告などのモデルに加え、海賊版サイトも同様のモデルを用いている。無料で視聴可能なこれらのサイトは、市場の重要なセグメントを獲得する潜在力がある。」

さらにNetflixは、「無料であること」が最大の魅力であるため、有料モデルで戦うには限界があるとも分析。コンテンツ自体が「魅力的で便利」な点が、ユーザー離れを加速させる一因としています。

現在の海賊版サイトは以下の点で進化しています：

一方、Netflixは社内に専用の「著作権侵害対策部門」を設けており、数億円規模のリソースを投入して監視・削除活動を行っています。

しかし、TorrentFreakはこう警鐘を鳴らします：

「Netflixの優位性は過去のものになりつつあり、今や海賊版サイトと“利便性”で競うのは困難な状況にある。」

Netflixの共同創業者であり、2023年にCEOを退任したリード・ヘイスティングス氏は、次のような見解を持っていました。

「トレントサイトでの著作権侵害は、Netflixの需要を高める役割を果たしている。」

これは、ある意味で“無料の宣伝”として海賊版を捉えるスタンスでした。しかし今、Netflix自身が「競争相手」として海賊版の脅威を正式に認め、対抗の難しさを語るまでに変化しています。

Netflixは長年、利便性と価格のバランスで海賊版サイトを上回ってきましたが、今やその前提は崩れつつあります。

こうした状況の中、Netflixがどう差別化を図っていくのか。業界全体が直面するこの課題は、今後のストリーミングビジネスの方向性を大きく左右するものとなるでしょう。