「背を高くしたい」という願望から、あえて脚の骨を折って身長を伸ばす手術=骨延長術(イリザロフ法)を受ける人が増えています。
しかし専門家は、この美容整形には深刻な身体的・心理的リスクが伴うと警告しています。
ブリストル大学の解剖学教授ミシェル・スピアー氏が、
骨延長術の仕組みと危険性について詳しく解説しました。

📈 世界で広がる「骨延長術ブーム」
骨延長術は、1950年代にソ連の整形外科医ガブリル・イリザロフが開発した医療技術が基盤。
本来は骨折の治療や先天的な四肢変形の矯正に用いられるものでした。
しかし近年では、アメリカ・ヨーロッパ・インド・韓国などで
美容目的の手術として人気が急上昇しています。
💬 スピアー氏は次のように分析します。
「身長に関する社会的プレッシャーが強まり、
リスクの高い外科手術を受けてでも理想の体型を追い求める人が増えているのです。」
中には、医学的理由よりも美容目的での手術数が上回るクリニックも存在するとのこと。

⚙️ 骨延長術の仕組みとは?
一般的な手法では、**大腿骨(太ももの骨)または脛骨(すねの骨)**を外科的に切開します。
この際、骨の血流や骨膜(骨の外側の膜)をできるだけ温存しながら、
骨の一部を切断し、外部フレームまたは内部ロッドを装着します。
🩺 2つの方式があります:
- 🔹 外部フレーム法(イリザロフ装置)
骨を囲む金属リングを体外に固定し、ねじで微調整して毎日1mmずつ骨を引き離す。 - 🔹 内部ロッド法
骨の内部に伸縮する金属棒を埋め込み、外部装置を使わずに骨を延長。
感染リスクを軽減できる一方で、非常に高額で適応できる症例が限られる。
この過程で体は「骨が離れた隙間を埋めるための新しい骨」を形成します。
骨だけでなく、筋肉・腱・血管・皮膚・神経も少しずつ伸びていき、
通常は数カ月で5〜8cm、最大で15cm前後の身長増加が可能です。

⚠️ 骨延長術に潜むリスクと後遺症
見た目の改善を目的とする人も多い一方で、
この手術は極めて負担の大きい処置であり、リスクは決して小さくありません。
🩸 骨形成の遅れと感染リスク
骨がゆっくり引き離されることで、体の修復サイクルが中断され、
新しい骨(仮骨)の硬化が遅れる可能性があります。
外部フレーム法では感染症のリスクも高く、長期にわたる抗菌ケアが必要です。
💥 激しい痛みと神経損傷
骨延長中は強い痛みを伴い、多くの患者が鎮痛剤を必要とします。
また、神経や腱が限界まで伸ばされるため、しびれ・焼けるような痛み・神経損傷が発生することも。
特に神経は6〜8%以上の伸長で永久的な機能障害を起こす可能性があります。
🚶♀️ 筋力低下・関節障害
関節の固定期間が長いため、
筋肉の萎縮・関節の硬直・歩行困難・関節炎といった後遺症が残るケースもあります。
🧠 心理的ストレスと後悔
数カ月〜1年以上のリハビリ生活を強いられるため、
心理的負担やうつ症状を訴える患者も少なくありません。
スピアー氏はこう指摘します。
「数センチの身長を得る代償として、
長期間の痛みと不安に耐える価値が本当にあるのかを考える必要があります。」

by@drdonghoonlee体外フレームを使うか伸縮性のロッドを使うかにかかわらず、その後のプロセスは同じです。外科医は短い治癒期間を空けた後、デバイスを調整して骨の両端を非常にゆっくりと、通常は1日当たり約1mmずつ離していきます。このゆっくりとした分離により、体は新しい骨を作る「骨形成」によって隙間を埋めようとし、同時に筋肉や腱(けん)、血管、皮膚、神経などもこれに応じて伸びていきます。1回の骨延長術では、数週間~数カ月間で5~8cmほどの身長増加が期待できます。一部の患者は大腿骨と脛骨でそれぞれ1回ずつ骨延長術を受けることで、合計12~15cmの身長増加を目指すとのこと。

◆骨延長術のリスク脚の骨を折ってゆっくり引き延ばすという骨延長術は、非常に体への負担が大きい美容整形手術であり、当然ながらさまざまなリスクが存在します。骨延長術の根本的な課題は、「引き離されている骨を体が絶えず修復しなくてはならない」という点にあるとスピアー氏は指摘しています。
💬 医学的必要性がある場合との違い
医療目的(骨折治療・成長障害・事故後の再建など)では、
骨延長術は人生を大きく変える有効な手段です。
しかし、美容目的で同じ処置を受ける場合は、
「過酷なリハビリと合併症のリスクを負う価値があるのか」という点が問題視されています。
スピアー氏は次のように結論づけました。
「骨延長術は、医学的に必要な人にとっては奇跡の治療。
しかし“理想の身長”を求めるだけの人にとっては、
それ以上の代償を伴う可能性があります。」

