💻Microsoft&Google出身エンジニアが選ぶ「人生を変えたソフトウェアエッセイ10選」

💻Microsoft&Google出身エンジニアが選ぶ「人生を変えたソフトウェアエッセイ10選」 #news
ソフトウェアエンジニアとしてMicrosoftとGoogleでキャリアの大半を過ごしたマイケル・リンチ氏が、これまで数千本の技術ブログやエッセイを読んできた経験から、「自分を形作ったソフトウェアエッセイ10選」を発表しました。

ソフトウェアエンジニアとしてMicrosoftとGoogleでキャリアの大半を過ごしたマイケル・リンチ氏が、これまで数千本の技術ブログやエッセイを読んできた経験から、「自分を形作ったソフトウェアエッセイ10選」を発表しました。

コードだけではなく、エンジニアとしての哲学や判断力を磨くための必読リストとして注目されています。

👉 The Software Essays that Shaped Me – Refactoring English

🧭1. “The Joel Test: 12 Steps to Better Code” by Joel Spolsky

(ジョエル・スポルスキー著『ジョエルテスト:より良いコードを書くための12のステップ』)

ソフトウェア業界の伝説的ブロガー、ジョエル・スポルスキー氏が提唱した「ジョエルテスト」は、優れた開発チームを見極めるための12の質問です。

例として次のようなものがあります👇
1️⃣ ソース管理を使用しているか?
2️⃣ 毎日ビルドしているか?
3️⃣ バグ修正を優先しているか?
4️⃣ 開発者の作業環境は静かか?
5️⃣ テスターはいるか?

20年以上前に書かれた内容ながら、根底には「開発者を尊重しているか?」という不変の価値観があります。
リンチ氏は「ジョエルテストで高得点を出す会社を探すことが、自分のキャリアの指針になった」と語ります。

🔐2. “Parse, Don’t Validate” by Alexis King

(アレクシス・キング著『解析せよ、検証するな』)

Haskellを題材に、データ検証よりも構造的な解析(パース)を行う重要性を説いたエッセイ。
ユーザー入力を「ただチェックする」のではなく、安全な型に変換して扱うことで悪意のあるコード注入などを防げると説明しています。

リンチ氏は「コンパイラがアプリケーションの安全性を守る最前線になる」という気づきを得たと語っています。
(PDF版あり)

◆2:“Parse, don’t validate” by Alexis King(アレクシス・キング著『解析せよ、検証するな』)

⚙️3. “No Silver Bullet” by Fred Brooks

(フレッド・ブルックス著『銀の弾丸はない ― ソフトウェア工学の本質と偶然』)

ソフトウェア開発における課題を「本質的な複雑さ」と「偶発的な複雑さ」に分けた古典的名文。

「ツールやハードウェアが進化しても、開発者の生産性を10倍に上げる“銀の弾丸”は存在しない」

この主張は1986年のものですが、AI時代の今でも議論の中心にあります。
リンチ氏は「どんなに抽象化が進んでも、“本質的な複雑さ”を理解できる人間が必要だ」とコメントしています。

🪟4. “Choices” by Joel Spolsky

(ジョエル・スポルスキー著『選択』)

UI設計の本質を突いた名文。
スポルスキー氏は「選択肢を増やすたびに、ユーザーの意思決定コストが上がる」と指摘します。

リンチ氏は、「コード設計やAPI設計でも同じことが言える」とし、自分の関数設計においても「ユーザーに判断を押し付けない」姿勢を学んだと語ります。

🧩5. “Application compatibility layers are there for the customer, not for the program” by Raymond Chen

(レイモンド・チェン著『アプリケーション互換性レイヤーはプログラムのためではなく顧客のために存在する』)

Microsoftで最も長く在籍する開発者の1人、レイモンド・チェン氏による実践的エッセイ。
Windows Vista時代の互換モードを題材に、開発者が「技術的な正しさよりもユーザー体験を優先すべき」と説いた内容です。

リンチ氏は「チェン氏の比喩は秀逸で、ユーザー視点で開発を考えるきっかけになった」と評価しています。


🧪6. “Don’t Put Logic in Tests” by Erik Kuefler

(エリック・クーフラー著『テストにロジックを入れるな』)

テストコードに条件分岐やループを入れると、バグを隠してしまう危険があると指摘。
「テストは“読む人に意図が伝わること”が最優先であり、シンプルで明確であるべき」という内容です。

リンチ氏はこのエッセイを読んで、

「テストコードはプロダクトコードとは違うルールで書くべきだ」
と気づいたと述べています。


🌐7. “A Little Bit of Plain JavaScript Can Do a Lot” by Julia Evans

(ジュリア・エヴァンス著『少しのシンプルなJavaScriptで多くのことができる』)

かつて「JavaScript=不安定で雑多な言語」と感じていたリンチ氏ですが、このエッセイで考えを一変。

エヴァンス氏は、「複雑なフレームワークに頼らず、素のJavaScriptでも十分」と主張します。
リンチ氏はその後、フレームワークを使わずにプロジェクトを構築し、「よりシンプルで安定した開発」を実現したそうです。


🏗️8. “Choose Boring Technology” by Dan McKinley

(ダン・マッキンリー著『退屈なテクノロジーを選ぶ』)

「最先端技術を使いたい」という誘惑を戒める実用的エッセイ。
新しいツールには魅力がある一方で、未知のバグやトラブルによって開発が停滞するリスクも大きい。

退屈な技術こそ信頼できる。すでに解決策が確立されているからだ。」

リンチ氏はこの思想を「直感的に理解できた」とし、安定性を重視する判断軸を学んだと語っています。


🔒9. “I’ve Locked Myself Out of My Digital Life” by Terence Eden

(テレンス・イーデン著『デジタルライフから締め出されてしまった』)

もし雷で自宅のデバイスがすべて破壊されたら?
もしパスワードマネージャーにアクセスできなくなったら?
――そんな「デジタル依存の脆弱性」を描いたエッセイです。

リンチ氏はこの記事をきっかけに、
**「データのバックアップだけでなく、復旧手順の確保も重要」**だと痛感したと語っています。


🧮10. “Brad Fitzpatrick on Parsing User Input”

(ブラッド・フィッツパトリック氏『ユーザー入力を解析するということ』)

『Coders at Work』でのインタビューから抜粋された一節。
フィッツパトリック氏は次のように語ります。

「ユーザーがスペースやハイフンを入れても、コンピューターがうまく処理できるようにすべきだ。」

リンチ氏はこの言葉を「ユーザー体験を軽視しない戒め」として覚えており、
「電話番号フォームで“カッコ禁止”と警告されるたびに思い出す」と述べています。


💡まとめ:コードを超えて「思想」を学ぶ10本のエッセイ

リンチ氏が選んだ10本のエッセイは、単なるプログラミング技術ではなく、
開発者としてどう考え、どう選択するかという「思考の軸」を教えてくれます。

どのエッセイも、20年以上経っても色あせないソフトウェア哲学を伝えるものばかり。
あなたの開発人生を変える一本が、きっとこの中にあります。


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