アルツハイマー病では、記憶力低下や認知機能の衰えだけでなく、「夜眠れない」「昼間に強い眠気がくる」といった生活リズムの乱れが頻繁に起こります。
最新の研究により、脳内の老廃物を処理する細胞が持つ“概日リズム(体内時計)”が、アルツハイマー病によって大きく乱されていることが明らかになりました。
この記事では、そのメカニズムと、どのように症状悪化につながるのかについてわかりやすく解説します。
🕒アルツハイマー病と「概日リズム」の深い関係
概日リズム(サーカディアンリズム)は、睡眠・覚醒のサイクルを含む身体の24時間周期のリズムです。アルツハイマー病の患者では、このリズムが大きく乱れ、
- 夜に眠れない
- 日中の強い眠気
- 夕方〜夜に認知機能が悪化する「夕暮れ症候群」
などが一般的に観察されています。
研究によると、アルツハイマー病のリスクに関する遺伝子のうち約半数が概日リズムの影響を受けていることが確認されており、脳の体内時計の乱れが症状悪化に直結していると考えられています。
🧬アミロイドβが「脳の清掃細胞」のリズムを狂わせる
最新研究では、アミロイドβが蓄積するように遺伝子改変されたマウスを24時間観察し、2時間ごとに脳組織を採取して遺伝子発現の変動を解析しました。
結果として、
- ミクログリア(脳の免疫細胞)
└ 有害物質や死んだ細胞を除去する“掃除役” - アストロサイト(神経細胞のサポート役)
└ ニューロンの情報伝達を維持する重要な細胞
これら2つの細胞における数百の遺伝子リズムが、加齢とは異なる形で強く乱されていることが明らかになりました。
本来は規則的なタイミングで「ゴミ掃除」や「脳の保守作業」をしてくれる細胞の働きが、アルツハイマー病の進行に伴い、不規則で散発的なタイミングになってしまうのです。

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🧹「脳のゴミ処理」の同期性が低下するとどうなる?
ミクログリアがアミロイドβプラークを除去する活動は、本来は概日リズムに同期しています。
しかしリズムが崩れることで、
- ゴミ掃除のタイミングがずれる
- 脳内から老廃物を効率的に除去できない
- 炎症反応が過剰に起きる
- 神経細胞のストレスが増加する
といった問題が連鎖的に発生します。
さらに、通常は概日リズムを持たない遺伝子まで新しいリズムを獲得してしまうケースが確認されており、この異常なリズムが炎症反応を増長させている可能性も示唆されています。

🔥炎症反応とリズム異常の負のループ
アミロイドβによって引き起こされるリズム異常は、脳内の炎症反応を強める方向に働くことがわかっています。これにより、
- 免疫細胞が常に過剰に活動する
- 脳のバランスがさらに崩れる
- アルツハイマー病の進行が加速する
という「負のスパイラル」に陥る危険性があります。
特にCHI3L1(YKL-40)と呼ばれるタンパク質は、過去の研究で概日リズムによって分泌量が調整されることが判明しており、アルツハイマー病のバイオマーカーとしても注目されています。

🌙リズムを整えることは予防・進行抑制の鍵になるか?
研究を主導したワシントン大学医学部のエリック・ムジーク氏は次のように述べています。
「アミロイドβが体内時計を操作し、特定の細胞の機能を強化・弱体化・停止させている可能性がある」
この研究は、アルツハイマー病の発症や進行が「脳の体内時計と深く関わっている」ことを示す強力な証拠となりました。
今後は、
- 概日リズムを最適化する治療
- 睡眠パターン改善による進行抑制
- 時間帯ごとの薬効を最大化する“時間治療(クロノセラピー)”
など、リズムに基づいた新しい認知症ケアの可能性が期待されています。

✅まとめ:アルツハイマー病は「脳の体内時計」を根本から乱す疾患
- アルツハイマー病では睡眠リズムの乱れが早期から発生
- 脳の清掃細胞(ミクログリア・アストロサイト)の遺伝子リズムが崩れる
- ゴミ掃除の効率が低下し、炎症が増え、進行が加速
- リズムの最適化は未来の治療戦略として有望
「睡眠」と「脳の老廃物処理」は切り離せない関係にあるという事実は、認知症対策を考えるうえで非常に重要なポイントです。
