食品研究とマーケティングの関係:本当に信じて良い情報とは?
健康志向が高まる中、オーガニック食品やプロバイオティクスなど「体に良い」とされる食品が注目されています。しかし、これらの健康情報は本当に信頼できるのでしょうか? メルボルン大学の食品政策研究者であるGyorgy Scrinis氏は「超加工食品」の例を挙げ、食品企業による栄養研究の影響について警鐘を鳴らしています。
企業が研究をねじ曲げる?
食品業界では、製薬会社が医療研究に出資するように、多くの食品メーカーも栄養研究に資金提供を行っています。その結果、研究内容にバイアス(偏り)が生まれることがあります。
コカ・コーラの例
2015年、ニューヨーク・タイムズは、コカ・コーラが「グローバル・エナジー・バランス・ネットワーク(GEBN)」という肥満研究団体に資金提供していたことを報じました。GEBNの目的は「砂糖入り飲料が肥満の原因ではない」と主張するための研究活動であったとされています。コカ・コーラが資金提供をやめると、GEBNは閉鎖。これにより、GEBNが実質的にコカ・コーラの宣伝活動の一環であったことが示されたのです。
「超加工食品」と企業の科学活動
「超加工食品」とは、油脂・糖分・デンプン・タンパク質などを工業的に加工した食品で、人工香味料、着色料、乳化剤、防腐剤などを含むものを指します。こうした食品には肥満や健康リスクが疑われています。
企業の目的は「科学的な正当化」
食品メーカーは、自社製品の正当性を主張するために科学を利用します。たとえば、コカ・コーラはエネルギー・バランスモデルを用いて「砂糖は問題ではない」と主張しました。その他の超加工食品メーカーも、主流栄養学の理論を活用して自社製品の無害性を訴える手法を取っています。
研究への出資と隠された真実
食品企業が出資する研究では、以下のような問題が指摘されています:
- 利益になる研究結果のみを求める
- 不都合な研究は無視
- 特定の栄養素だけに焦点を当てる
その結果、「どのように食品が消費されているか」や「社会的・商業的な背景」は見過ごされがちです。
栄養素だけの議論の限界
超加工食品の議論では「塩分・糖分・脂肪分が多すぎる」という特定の栄養素に焦点が当てられがちです。しかし、この枠組みでは「成分を減らす」という解決策しか生まれません。食品メーカーは減らした成分を補うため、合成甘味料や香料を使うことで問題を回避しています。
栄養マーケティングの巧妙さ
食品パッケージには「タンパク質」「食物繊維」「オメガ3脂肪酸」といった栄養素が記載されますが、これは暗黙の「健康強調表示」として機能します。消費者はこれらの栄養素を見て「健康に良さそう」と思い込んでしまうのです。
改善への提言
Scrinis氏は以下の改善策を提言しています:
- 科学者や研究機関の独立性を高める
- 利害関係の透明性を確保する
- 業界出資の研究を政府のガイドライン策定から除外する
- 栄養素ではなく食生活全体に焦点を当てる
これにより、超加工食品のあり方を見直し、消費者が正しい情報に基づいて選択できる社会が実現できるでしょう。
まとめ:消費者としてどう向き合うか?
私たちは企業の情報操作に影響されやすい立場にいます。しかし、食品選びの際には以下のことを意識することが大切です:
- できるだけ加工度の低い食品を選ぶ
- 栄養素だけでなく全体のバランスを意識する
- 情報源の信頼性を確認する
正しい知識を持って、企業のマーケティングに惑わされず、健康的な食生活を送りましょう。
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