新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは、社会生活や精神面に多大な影響を与えました。しかし新たな研究によると、この影響はウイルスに感染していない人の脳にまで及び、加齢を加速させていた可能性があるというのです。

🦠 パンデミックによって私たちの脳はどう変わったのか?
イギリス・ノッティンガム大学の研究チームは、UKバイオバンクが提供する脳のMRIスキャンデータをもとに、パンデミックが脳の老化に与えた影響を調査しました。対象となったのは、約1000人の成人で、少なくとも2年以上の間隔を空けて2回の脳スキャンを受けたデータが使用されました。
- 対照群:パンデミック前に2回スキャン
- 実験群:パンデミック前と後に1回ずつスキャン
このデータをもとに、**機械学習モデルで「脳年齢ギャップ(Brain Age Gap)」**を測定。実年齢と脳の生物学的年齢の差を算出しました。

🧓 感染していなくても“約5.5カ月分”の老化が進行
結果は驚くべきものでした。新型コロナに感染していない人でも、パンデミック期間を経験しただけで、脳の老化が平均5.5カ月早まっていたのです。
これはつまり、実際に感染していなくても、生活の変化や精神的ストレス、社会的隔離といった要因が、脳の健康に実際に measurable(測定可能)な影響を与えていたことを示しています。
研究者らは、パンデミックを経験したグループでは灰白質や白質の変化が見られ、それは感染者と非感染者の両方で共通していたと報告しました。
イギリスのノッティンガム大学の研究チームは、パンデミックが人々の脳に及ぼした影響を調査するため、UKバイオバンクが収集した脳スキャンデータで機械学習モデルをトレーニングしました。このモデルはさまざまな年齢における脳の状態を予測し、実際の脳スキャンデータと実年齢を比較して「脳年齢ギャップ」を算出します。その後研究チームは、少なくとも2年の間隔を空けて2回の脳スキャンを受けた996人分のデータを機械学習モデルで分析し、脳の老化レベルを測定しました。被験者の中にはCOVID-19パンデミック前に2回のスキャンを受けた対照群と、パンデミック前に1回、パンデミック後に1回のスキャンを受けた実験群が含まれていました。

👨⚕️ どんな人が影響を受けやすかったのか?
研究では以下のような人々により強い影響が見られました:
- 男性
- 高齢者
- 健康状態が悪い人
- 教育・収入レベルが低い人
- 住居が不安定な人
たとえば、雇用が不安定だった人は脳年齢が平均で5カ月高いという結果が出ており、社会的背景や生活基盤が脳の健康に直結している可能性が指摘されています。
また、実際に**認知機能の低下(記憶力や集中力の低下)**が見られたのは感染者のみでしたが、それ以外の人にも脳構造の変化は確認されました。

💡 パンデミックが示した「脳の健康」への新たな視点
今回の研究は、私たちが考える健康が単に「病気にかからないこと」では不十分であることを示唆しています。特にパンデミックのような大規模な社会的ストレスは、身体の健康だけでなく、精神・認知・社会的健康にも深刻な影響を与えることが明らかになりました。
ノッティンガム大学の筆頭著者であるアリ=レザ・モハマディ=ネジャド氏は、次のようにコメントしています。
「感染の有無にかかわらず、パンデミックの混乱・孤立・活動の減少といった経験が、脳の老化を加速させた可能性があります。今後の危機管理には、身体的な健康指標だけでなく、精神的・認知的側面にも焦点を当てる必要があります」
🧠 今後の生活にどう活かすべきか?
この研究から得られる教訓はシンプルですが重要です。
- 「健康」とは心身一体であるということ
- 社会的なつながりや日常の安定が脳の健康を守るということ
- パンデミックのような大規模災害への対策は、メンタルヘルスや認知機能も含めて総合的に考える必要があること
ウイルス感染だけでなく、社会の構造やライフスタイルの変化もまた、私たちの脳に直接的な影響を与えるという点は、今後の公衆衛生対策にも大きな示唆を与えるでしょう。
✅ まとめ
- パンデミックを経験した人々の脳は、約5.5カ月早く老化していた
- 感染していない人にも変化があり、特に社会的弱者で強く影響
- 今後の危機対応には「身体+脳(精神・認知)の健康」が必須